ネコでは肥満により2型糖尿病のリスクが著しく上昇することが知られている。肥満を予防するためにネコが肥満しやすい体質であるか否かを診断する検査技術はまだ確立されていない。申請者は遺伝子診断法に着目し、とくに一塩基多系技術(Single Nucleotide Polymorphism;SNP)を用いて肥満に関与すると思われる4遺伝子をすでに発見しており、本申請研究課題は新規に発見したこの肥満ネコSNPの機能を解析し、家庭動物の臨床検査技術の開発とその応用を目的としている。現在、対規模なSNP解析がヒトで行われており、複数の遺伝子が2型糖尿病関連遺伝子として報告されているが申請者は迅速に広範囲からSNPをスクリーニングするためにサーベイヤー法を用い、CDKAL1遺伝子中に肥満との関連が疑われるSNPを新たに発見した。同遺伝子はヒトで特に注目されており、有意なSNPはすべてイントロン5に存在すると言われている。申請者らの研究成果によればネコCDKAL1遺伝子は全長630kbに及び、同領域から有意なSNPを検出することは困難を極めるが、既にイントロン11において候補として6カ所のSNPを発見している(2012年7月国際小動物臨床検査学会にて発表予定)。今後、長大なイントロン5でのSNP検出のためにPCR断片を各個体精製、BigDye Terminator v3.1にて反応および精製、ABI PRISM 3100-Avant Genetic Analyzerにてシークエンス解析を行う。同時にネコCDKAL1遺伝子の機能解析も進める計画である。またこれまでに発見しているSNP検出のため、理化学研究所チームが開発したSmart Amp法の利用を検討し、本大学付属動物医療センターへの来院時の採血から30分以内のSNP診断サービスの実現を目指す予定である。
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