研究課題/領域番号 |
22780272
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
畠間 真一 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所・寒地酪農衛生研究領域, 主任研究員 (50360623)
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キーワード | 筋血管周皮腫 / パピローマウイルス / E2遺伝子 / 乳頭腫症 / 腫瘍形成機構 |
研究概要 |
前年度までに、牛筋血管周皮腫(MPC)自然発生例を世界で初めて診断した。見つかった牛MPC病変9検体の全てから牛パピローマウイルス1型(BPV-1)由来遺伝子断片が検出されたため、本ウイルスが牛MPCの形成に関与する可能性が考えられた。 本年度は、牛MPCの原因と考えられるBPV-1の全ゲノム塩基配列を決定した(DDBJアクセション番号:AB626705)。牛MPC由来BPV-1は、いずれの検体から検出されたものもゲノム塩基配列が100%一致することから、同一ウイルス株であることがわかった。一方、牛乳頭腫症の原因となるBPV-1(DDBJアクセション番号:XO2346)と比較した場合、ゲノム全体では99.4%一致するもののE2遺伝子領域に特徴的な違いが認められた。すなわち、E2遺伝子の3'側(ゲノム上の位置は3,444)に1塩基(グアニン)の挿入があることでフレームシフトがおこり、312塩基長い変異型E2遺伝子領域が形成される。この様にE2のC末端側構造がウイルス株によって異なるため、BPV-1は感染細胞を様々な上皮系あるいは間葉系の腫瘍細胞へと分化誘導する可能性が考えられた。 E2は本来、ウイルスの複製や転写、感染細胞の癌化を制御する転写因子である。その機能は、C末端側で様々な細胞内因子と複合体を形成することにより実行している。そこで、MPC由来BPV-1の変異型E2と相互作用する細胞側因子を特定するために、C末端側領域をbaitとしたYeast Two-Hybrid試験の準備を行った。現在、baitプラスミドやpreyプラスミドライブラリーの準備が完了しており、今後はそれらを用いた解析を進める計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
論文成果が出ており、研究は着実に進行している。しかし、Yeast Two-Hybrid試験によるタンパク間相互作用の解析については、当初2年目の達成を目指していたが、まだ結果が出ていない。口蹄疫発生等の予期せぬ災害によって牛MPC自然発生症例の採集が一時的に困難になり、研究の進展がやや遅れた。現在は研究の遂行に支障はなくなっており、これまでの遅れを取り戻すべく研究を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
Yeast Two-Hybrid試験によって、E2のC末端側と相互作用する細胞内因子の検索を行う。陽性クローンが得られた場合は、免疫沈降試験等によって哺乳類細胞や原核細胞中でのタンパク間相互作用を確認する。変異型E2の新規結合パートナーを特定した後は、それら複合体によって制御されるシグナル伝達経路が、感染細胞の分化や脱分化、腫瘍化などにどの様に関わるかを解析していく。 研究計画の変更等はない。
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