研究概要 |
カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni,以下Cj)感染症は主に鶏肉を介した食中毒により発生するため、その予防には感染源である鶏の汚染制御が重要であると考えられている。一方で、その制御は未だ達成できていない。本研究では、当該病原菌の鶏宿主への定着機構に関する分子基盤を明らかにすることを目的として、平成22年度は、以下の検討をおこなった:GFP発現Cj菌体を作成し、SPF鶏個体に経口感染させた。当該菌体を感染後2週間および1ヶ月の時点で回収し、盲腸およびその他腸管臓器内での菌数動態について観察したところ、盲腸内で顕著な定着菌数の増加を認めた。また、経口接種部位である、そ嚢内においても顕著な菌数増加を認め、鶏個体における定着部位の一つと考えられた。盲腸内容物より微生物叢を回収し、FACSソーティングを通じて、約10^6オーダーの蛍光標識Cj菌体を選択的に得ることができた。これまでにin vitro下で培養したGFP発現Cj菌体をサンプルとして、iTraq染色を行い、LC-MS/MS分析の条件検討を行った。平成24年度は、鶏生体より回収した菌体サンプルのLC-MS解析に着手し、In vitro培養菌体との相対比較解析を通じて、鶏生体に定着した場合において発現変動を示すタンパク因子の網羅的解析を進め、代表的な因子について遺伝子欠損株を作成するとともに、定着性を含めた病原性に関わる解析を行うことで、その分子基盤の整理を行っていく予定である。
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