研究課題
カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni,以下Cj)感染症は、主に鶏肉を介した食中毒により発生する。従って鶏生体における当該菌の生態を知ることが、当該動物における汚染制御、ひいてはヒト感染の予防に重要な知見を付与することが期待される。本研究では、当該病原菌の鶏宿主への定着機構に関する分子基盤を明らかにすることを目的として、以下の知見を得た。前年度に作成したGFP発現Cj菌体について、鶏腸管に定着する菌体および試験管内において培養した菌体それぞれの総タンパクを抽出し、iTRAQ標識を行った後、LC-MSを用いた比較変動解析に供した。計4000以上のピークが検出され、このうち、C.jejuni由来タンパク分子として信頼性をもって検出された55ピークについて、MS解析を実施した。変動解析の結果、この中に含まれる3分子は鶏腸管内より回収したサンプルにおいて、顕著な発現亢進を認めた。この発現性の亢進は、生体感染経過と共に高まりを示したことから、当該菌の鶏宿主腸管内における持続的定着を果たすに必須な分子と想定された。更に、得られたペプチド情報からタンパク分子の特性をはかり、生化学的性状の解析を行った。今後は、これらの遺伝子変異株を作成し、宿主定着性・細胞毒性等に及ぼす同分子機能性の詳細な解析を進め、以て、鶏腸管におけるCjの定着に係る機能性をより詳細に検討することで、本菌の宿主適応性を紐解く学術的知見を得ることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
年度当初の予定をほぼ完了しており、H24年度(最終年度)にはこれに基づく評価を実施する目途がついたため
本研究では、タンパク分子のみを評価対象としているが、これまでに得られた知見から考えると、糖鎖あるいは脂質に関わる同様の解析手法も必要であろう。また、ウシにおける本菌の分布とそのメカニズムを知り得ることは、公衆衛生の向上を図る上で重要な課題と考える。
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