研究課題
消化管粘膜組織における腸管型アルカリフォスファターゼ(iALP)分布の検討消化管内視鏡を用いて、健常犬から十二指腸と結腸の組織を採取し、作成した凍結組織標本において、酵素反応を利用したiALP染色を行った。その結果、十二指腸および結腸ともに、主に粘膜上皮に限局してiALPが分布していることが明らかとなった。また、結腸に比べて十二指腸の粘膜上皮の方がiALPの分布量が多いことも組織学的に認められた。また、iALPの特異的阻害剤であるフェニルアラニンを作用させたところ染色反応が消失したことから、この染色によって染められたものが確実にiALPであることが証明された。これまでiALPはヒトや齧歯類において、ほぼ小腸のみに発現していると言われてきたが、本結果によって、少なくとも犬では大腸(結腸)にも存在していることが示された。ただし主となる発現部位は犬においても小腸であることが明らかとなった。これら2点は、今後のiALPに関する研究にとって有用な情報である。糞便中のiALP活性の解析健常犬から採取した糞便の上清を用いて、iALP酵素反応を解析した。その結果、糞便中にiALPの酵素反応が確認された。また、この反応は上述のフェニルアラニンによって阻害されたことから、間違いなくiALPであることが示された。本結果から、犬においてiALPは消化管内腔へ分泌されている可能性が示唆された。糞便上清の希釈列の作成には当初懸念していた手技的問題はなかった。このアッセイ系は将来的に便中のiALP定量検査系を確立するための基盤となる重要な結果である。
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Journal of Veterinary Medical Science
巻: 72 ページ: 1479-1482
FEMS Microbiology Letters
巻: 312 ページ: 169-175