1.犬の膀胱移行上皮癌症例におけるHER-2発現調査 本学動物病院の症例および過去の病理組織標本を用い、犬の膀胱移行上皮癌におけるHER-2タンパクの発現調査を、ヒ トHER-2抗体を用いた免疫組織学的染色を用いて実施した。その結果、調べた全ての膀胱移行上皮癌組織でHER-2タンパクの過剰発現が確認された。この結果により犬の膀胱移行上皮癌の発生機序にHER-2が何らかの役割を果たしている可能性が考えられる。 2.犬膀胱移行上皮癌細胞株の樹立 本学に来院した膀胱移行上皮癌症例犬より腫瘍組織を採材し初代培養を行い、細胞株を樹立しその性状を解析した。現在、2株が細胞株として樹立できその性状解析を実施している。その他に2株継代培養中である。これらのように継続して使用可能な細胞株が増えることにより、膀胱移行上皮癌に対する今後の新たな治療法の開発に寄与できるものと思われる。 3.犬の膀胱移行上皮癌細胞株のHER-2タンパク発現調査 樹立された2種類の移行上皮癌細胞株の細胞レベルでのHER-2タンパクの発現を免疫組織化学的染色により調べた。その結果、2種類の細胞株のいずれもHER-2タンパクの発現が認められた。継続培養を行っても元の腫瘍組織の性質を維持していることが示唆される。また、これらの細胞の増殖にもHER-2が何らかの役割を果たしていることが考えられる。今後発現量の定量をウエスタンブロット法あるいはリアルタイムPCR法により実施し、過剰発現しているのか調べる予定である。
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