我々は、膀胱移行上皮癌に対してHER-2が100%の割合で過剰発現していることを認めた。そこで、移行上皮癌症例犬の新規治療法としてHER-2をターゲットとした分子標的治療の研究を実施した。犬の移行上皮癌細胞株の初代培養を行い、得られた細胞の性状解析を実施した結果、3株の移行上皮癌細胞が得られた。3株ともHER-2の遺伝子およびタンパクレベルにおける発現が認められた。しかし抗癌剤感受性試験の結果、抗HER-2抗体であるトラスツズマブに対しては細胞傷害性を示さなかった。犬の膀胱移行上皮癌に対するトラスツズマブの抗腫瘍効果はin vitroでの評価が難しい免疫系を介していることが示唆された。
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