研究概要 |
本研究は、これまでに確立した野生型およびアトバコン(ATV)耐性Babesia gibsoni培養株を用いて、犬B. gibsoni感染症に対するATVを中心とした多剤併用療法の確立を目指すものである。本年度は(1)in vitroにおけるATVと他剤との相互作用についての検討を行い、(2)さらに感染動物に対するアトバコンと多剤の併用療法の試みを実施した。 (1)野生型およびATV耐性B.gibsoni培養株に対してATVと、Diminazene aceturate, Azithromycin, Doxycycline, Clindamycin, Proguanilの相互作用を確認したところ、いずれも相乗~相加作用が認められ、明らかな拮抗作用を示すものはなかった。 (2)(1)の結果を受け、ATVおよびProguanilの合剤であるMaralone^[〇!R](GraxoSmithCline)を、実験的に感染を成立させた犬に10日間投与し、その治療効果および副作用発現の有無について検討を行った。その結果、急性期および慢性期犬B. gibsoni染症に対して本薬剤は速やかな治療効果を有することが示された。またMaralone^[〇!R]は犬に対して強い副作用は示さず、安全に使用できることが確認された。しかし、すべての犬において治療終了後に原虫の再出現、ATV耐性の発現が確認された。 犬B. gibsoni感染症に対するMaralone^[〇!R]の治療効果を検討した研究はこれまでに報告されておらず、本薬剤は今後臨床現場における急性期犬B. gibsoni感染症の治療薬剤として新たな選択肢となる可能性がある。しかし本薬剤による短期間の治療では再発やATV耐性発現の問題が残り、今後これに対する対策を検討する必要がある。
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