研究課題
腫瘍治療は主に外科的摘出や放射線治療による局所治療と化学療法に全身療法が柱となる。しかし、これらの治療法では取り除くことのできない微小残存病変が再発を引き起こすため、免疫療法などの補助治療が必要である。これまでに腫瘍免疫を高める様々な方法が試みられているが、実用化に至り大きな効果をあげている治療法が未だ存在しない。有効な免疫療法を確立するためには、腫瘍に特異的に発現する抗原を同定し、その抗原を認識し活性化する免疫担当細胞を誘導する必要がある。そこで多くの腫瘍に発現し、in vitroで強力な腫瘍免疫を誘導しうるWT1を腫瘍抗原としたワクチン療法と細胞障害性T細胞の抑制蛋白であるCTLA4を抑制するペプチド療法の併用による、より効果的な免疫療法の確立を目的とした研究を計画した。H22年度はまず初めに、抗ヒトWT1ポリクローナル抗体の犬WT1との交差性をWestern blottingにより確認したところ、数種の抗体のうち一種のクローン(C-19)において、ヒトおよびマウスのWT1蛋白とほぼ同じ分子量の蛋白バンドが犬の蛋白においても確認され、WT1ペプチドにより得られたバンドの消失が確認された。これにより抗ヒトWT1抗体の犬との交差性が確認できた。次に、犬の正常組織におけるWT1蛋白の発現について免疫組織化学により確認したところ、一部の正常組織(腎臓、気管支、脾臓、乳腺)においても発現が確認され、その発現パターンはこれまでに報告のあるヒトやマウスと同様であった。続いて、犬自然発生腫瘍組織におけるWT1蛋白の発現について免疫組織化学により解析を行っている。
すべて 2010
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Journal of Veterinary Medical Science
巻: 72(12) ページ: 1575-1581
Journal of Veterinary Internal Medicine
巻: 24(4) ページ: 897-903