研究概要 |
本研究の最終目的は、イヌ腫瘍の診断・予後・治療効果判定の分子マーカー、特に血清マーカーとしてmicroRNA分子の測定系の確立である。22年度は、1)4種のmicroRNA (miR-21, miR-16, miR-29b, miR-92a)に関して、本研究で採材した腫瘍サンプル(腫瘍組織、血液)での発現動態をqRT-PCRで確認した、2)同時に犬の腫瘍組織における新規の特異的発現動態を示すmicroRNAを探索するためにイヌ特異的microRNAアレイ(miRCURY Array microRNA、miRBase16.0 dog)を実施した。実験1)の結果:イヌ腫瘍サンプルでのqRT-PCR条件が作成でき、多くの腫瘍サンプルでmiR-21が上昇していた。同時に血清サンプル中のmiR-16に関してqRT-PCRの条件を検討し、イヌ血清中のmicroRNAの測定条件を決定した。 この結果より最終目的達成の方法論は確立できたと考える。実験2)の結果:アレイ解析は合計14腫瘍と3正常サンプルを用いた。乳腺管状乳頭状癌、乳腺良性混合腫、正常乳腺の各群3例を比較した結果、網羅的な発現の違いの変化は乳腺管状乳頭状癌と正常乳腺の間で最も大きく、乳腺管状乳頭状癌と乳腺良性混合腫の間が最も小さかった。この結果は悪性度に依存してmicroRNAの発現動態がグローバルに大きく変化していることを示すと考えられる。各群間の比較では(1)乳腺管状乳頭状癌で乳腺良性混合腫より2倍以上発現増加しているものが3つ、発現低下しているものが7つ存在し、(2)正常乳腺に対して両腫瘍で共通に2倍以上発現上昇しているものが3つ認められ、実験1)で確認されているmiR-21も含まれていた。これらの結果はアレイの結果も信頼できるものであることを示している。
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