平成23年度中に、ハイブリッド型SPECT-CT装置を用いた犬および猫のFDG-PET検査の麻酔ならびに撮像法を確立し、正常組織ならびに各種腫瘍のFDG取り込みを画像化ならびに数値(SUV:腫瘍-組織放射能比)の基準化を行った。始めに人のプロトコルを基に検査を行ったところ、人に比べて検査前の運動が活発なことから、犬や猫は腫瘍と正常組織との取り込み比率の差が小さいことが判明し、良性/悪性の判断には注意が必要であることが示唆された。そのため本研究により、8歳前後の正常犬を用い、ある程度高齢犬の正常な組織代謝量の数値化を行い、この値を基にがんの細胞活性を評価できるようにした。結果として、これまで単純CT撮影では発見すら難しかった軟部組織中に潜む転移病巣の可視化とともに悪性度の評価まで可能となり、小動物の早期がん発見へ一石を投じるデータを得ることができた。 もう一つの心筋SPECT検査では、小児よりもさらに心室内腔の小さな小型犬の画像化を試みた。心臓と胆嚢の距離が人よりもはるかに短い犬において、薬品の胆汁排泄が主たるアーティファクトになるため、医療用炭酸ガスによる気腹を検討した。あらかじめ実験犬において副作用等の問題が生じない使用量を求めておき、もっとも心臓を単体で分離評価できる体位や固定法を検証することで、汎用SPECT-CT装置を用いた心筋SPECTによる10kg前後の犬における心筋活性の3次元画像の構築と視覚による評価を可能とした。このことにより、心臓の動的シンチグラフィと同時にSPECTを撮像するプロトコルが確立され、心筋の変性性疾患が生じた際の診断、病勢評価ができるようになることが期待された。
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