イヌやネコの飼育環境の改善や予防獣医学の発達により、伴侶動物の平均寿命は延長し、臨床領域でがんや心不全といった加齢性疾患が大幅に増加している。これらの病勢をより詳細に把握するため、CTやMRIなどの高度画像診断技術に加え、核医学検査、特に陽電子断層撮影(PET)や単一光子放射断層撮影(SPECT)検査といった核医学断層撮影法による機能検査の必要性が高まることが考えられる。しかし、PETやSPECTの獣医臨床例は世界的にも例が少なく、検査法が確立されているとは言えない。そこで本研究では、高齢犬を対象としたPETがん検査と、Tc-99mを用いた心筋SPECT検査に適した撮影条件および麻酔法を含む手技、被ばく防護法を確立し、今後いっそう受診数の増加が予想される伴侶動物の核医学検査の標準的手法として広く提供することを目的とした。 本研究により、Fluoro-deoxy-D-glucose(FDG)-PET検査の手法ならびに評価法がほぼ確立でき、胸腔ならびに腹腔内の主要な臓器の正常な腫瘍?組織放射能比(SUV)を求めることができた。心筋SPECTについても、これまでの間に10kg前後の犬であれば、画像の構築ならびに心筋活性の評価が可能となった。一方で、10kg未満の犬に関しては、腹腔内に医療用炭酸ガスを注入し、気腹を行うことで劇的に心筋の解像度が向上させることに成功した。
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