本研究目的は、自然発症した犬の脊髄損傷症例に対して軸索再生ならびに髄鞘形成能を有する嗅神経鞘細胞を自家移植することによって、その有用性ならびに副作用を評価するものであった。しかし研究期間内に症例選択基準をクリアし、飼い主の同意を得て実際に臨床応用にまで至る症例はいなかった。その他の研究成果として脊髄疾患症例の脳脊髄液中に存在するタンパク質濃度の測定が、脊髄損傷の程度や予後判定に有用であることが判明した。また、犬の脊髄損傷症例において、硬膜外カテーテル電極を用いて術中体性感覚誘発電位(somatosensory evoked potential : SEP)を測定できることが判明し、術中モニタリングのみならず、予後判定法に用いることができる可能性が示唆された。さらに犬において経皮電極によって簡便に運動誘発電位(motor evoked potential : MEP)を測定できることが判明した。
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