まず、研究計画通りに、低温馴化前後のシロイヌナズナより、細胞膜マイクロドメイン画分の単離を行った。次に、既存のanti-SYT1抗体を用いて、マイクロドメイン画分に対し免疫沈降を行い、沈殿した画分に対し1次元電気泳動を行った。その結果、この免疫沈降により取れてきたタンパクは全くなく、細胞膜マイクロドメイン画分に対しanti-SYT1抗体が反応できないことが判明した。そこで、界面活性剤としてはリゾフォスファチジルコリンよりは弱いがTX-100よりも強力なオクチルチオグルコシドを用いて、できるだけマイクロドメインタンパクがSYT1より離れないような条件で細胞膜画分より可溶化を行い、anti-SYT1抗体を用いた免疫沈降を試みた。その結果、数十種類のみのバンドが得られた。低温馴化前後でのバンドパターンはほぼ同じであることが明らかとなった。一方、本研究計画と同時並行して、コムギ、ライムギ、オートムギにも細胞膜修復による凍結耐性が存在し、その機構にSYT1タンパク質が関与することを明らかにした。そこで、データベースが利用できるコムギに対し、オクチルチオグルコシドを用いた細胞膜画分からの可溶化、および、anti-SYT1抗体を用いた免疫沈降を試みた。その結果、コムギでも数十種類のみのバンドが得られたが、興味深いことに、低温馴化前後においてバンドパターンは異なった。シロイヌナズナおよびコムギで得られた免疫沈降画分のバンドに対し、それぞれ、LC-MS/MS解析にかけたところ、アクアポリンやV-ATPaseなどのマイクロドメインタンパク質が同定された。今後、それぞれ免疫沈降画分に対しショットガン解析を行い、凍結耐性向上に関係するものを解析していく予定である。
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