本研究では、間断灌漑水稲栽培技術の一つであるAltenate Wetting and Drying(AWD)節水水田土壌中のメタン生成古細菌群集の解析を通じて、メタン発生抑制機構を明らかにすることを目的としている。本年度は、国際稲研究所(フィリピン)で試験されている圃場を対象として三作付け期間のメタン生成古細菌の群集構造解析を行い、継続的な節水水稲栽培の影響を明らかにした。 常時湛水区と、深さ15cmの土壌水分張力が-20kPaまで低下した際にのみ灌水することを基本とするAWD区の2処理区から、2008年雨期、2009年乾期、2009年雨期に経時的に採取した土壌を用いて、メタン生成古細菌の16SrDNAを対象としたPCR-DGGE解析、mcrA遺伝子を対象としたqPCR解析を行った。その結果、各栽培期間で観察されたDGGEバンドはそれぞれ17~25本、15~25本、13~20本であり、パターンは常時湛水区とAWD区で異なる傾向にあることがクラスター分析により示された。異なる栽培期間の間で比較すると、継続的な処理に伴い、常時湛水区とAWD区共にDGGEパターンは徐々に変化すること、しかしその変化は常時湛水区とAWD区で異なることが明らかになった。常時湛水区ではMethanosarcinales、AWD区ではMethanosarcinalesやCrenarchaetaに近縁な配列を示すバンドが特徴的であったが、乾土lgあたりのmcrA遺伝子数は、処理区間に有意な違いは見られなかった。 以上より、継続的なAWD節水管理は、土壌中のメタン生成古細菌数の減少には繋がらないが、菌の構成には影響を及ぼし、徐々にAWD節水管理下の土壌条件に適応した群集構造に変化させることを明らかにした。したがって、AWD節水管理下では、有機物の分解過程、メタン生成経路が変化していることが推察された。
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