研究課題
昨年度の報告では、フェントン反応に用いる金属、特に鉄がセルラーゼに阻害作用を及ぼすことを明らかにしていたため、今年度は、鉄を用いずとも、同様のラジカル酸化分解を期待できるアルカリ-過酸化水素法の検討とともに、糖化酵素の自前調製を行った。国内の自生地域から収集し育成したススキ(Miscanthus sinensis)3品種およびジャイアントミスカンサス(Miscanthus ×giganteus)を原料として用い、アルカリ-過酸化水素法の条件検討と伴に、自前調製した粗酵素液による高効率糖化を試みた。温度条件の予備的検討の結果、ヒノキと同様70℃が最適であった。アルカリ-過酸化水素法による溶出成分の大部分がヘミセルロースおよびリグニンであり、処理物のリグニン含量とグルコース収率に負の相関があった。さらに、M. sinensis (Shiozuka)を用いた場合、リグニン含量10-15%の間でグルコース収率に大きな増加が確認され、脱リグニンの閾値が存在することが明らかになった。市販セルロースを炭素源としてTrichoderma reesei ATCC66589株およびスクリーニングで得られたPenicillium pinophilumの培養液混液を粗酵素液として用いることにより、バイオマス糖化用として市販されているセルラーゼと比べ同等のグルコース収率(残渣に含まれる構成糖の約83%)および高いキシロース収率(残渣に含まれる構成糖の約95%)を得ることが可能になった。副次的な結果として、ヒノキを原料として、微量の酸を添加したオルガノソルブ処理の検討および酵素の至適化を行うことで、高いグルコース収率を達成するとともに、リグノセルロースの酵素糖化に重要な因子として、リグニンの変性および表面のナノスケール構造変化を提案した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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