研究概要 |
ダイズ製品は,わが国では主要な食品であり,日本人が摂取するカドミウム量のうち約10%はダイズ製品由来とされ,ダイズのカドミウム濃度は消費者の関心も高い.食の安全が懸念されている現状では,ダイズのカドミウム吸収低減技術の開発は急務である.近年,子実中のカドミウム濃度が著しく低いダイズが見出され,それらを活用した新品種の育成が期待されている.一方で,カドミウム低吸収ダイズのカドミウムの吸収・蓄積に関与する生理機能は明らかにされていない. そこで,本研究では根圏温度がカドミウム低吸収ダイズと通常品種の吸水能に及ぼす影響を比較し,吸水能の品種間差について検討した.その結果,通常品種に比べ,子実中カドミウム濃度が低い系統(以下,低吸収系統)は根圏温度が15℃の場合,気孔コンダクタンスが著しく低下し,吸水量も減少する傾向が認められた.しかし,このような根圏温度に対する吸水能の品種間差とCd吸収能の関係については判然とせず,更なる検討が必要であることが明らかと成った. また,本研究ではゲノム情報が解読済の通常品種(エンレイ)を用いて35℃から5℃までの根圏温度に対するCd吸収能の反応についても調べた.その結果,Cd吸収能は根圏温度が25℃~15℃の範囲で最大吸収域を示した.このことから,温度をプロモーターとしてCd吸収能を活性化或いは不活性化させる生体機能の存在が示唆され,Cdの吸収に関与する分子生理学的な機構の存在と今後の研究の方向性を明示することが出来た.
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