天然ゴムは合成ゴムでは未だに到達できない優れた物性を示し、タイヤ等のゴム工業製品に不可欠な天然材料である。現在産業的に利用されている天然ゴムの大部分は、熱帯地域で生育するパラゴムノキのラテックスから生産されている。近年の世界的な天然ゴムの需要の高まりから、遺伝子工学的手法による天然ゴム生合成能の増強が期待されている一方で、ラテックス内における遺伝子発現制御機構に関する知見はほとんど得られていなかった。そこで本研究課題では、パラゴムノキにおけるラテックス内遺伝子発現制御にかかわるプロモーター配列と、そこに作用する転写調節タンパク質の解明により、効率的なラテックス特異的遺伝子発現システムを構築することを目的とする。 まずパラゴムノキラテックス内において特異的に高発現する遺伝子を探索するため、パラゴムノキEST解析において特に重複数の多かった10種の遺伝子について、ラテックス、葉、茎、根における各遺伝子の発現量をReal-Time PCR法により解析した。その結果、その全てについてラテックスにおける発現量が他の組織の発現量よりも10~80倍高いことが分かった。そこで、特にラテックスでの発現量が高い3種の遺伝子について、TAIL-PCR法およびInverse-PCR法により各遺伝子のコード領域に隣接する5'上流遺伝子を単離した。これらのプロモーター配列に共通に見いだされる配列モチーフを、オンライン予測アルゴリズムで検索したところ、植物の維管束組織における遺伝子発現制御に関与するシス配列と相同性の高いモチーフなど、複数の共通モチーフ配列を見いだすことが出来た。これらのシス配列がラテックス特異的発現に関与することが予想されるため、次年度にレポーターアッセイを行い、見出された配列モチーフの機能を解明する。
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