マグネシウム輸送体のクローニング対象として高等植物であるイネを用いた。これまで、酵母でMg輸送能が確認できた報告は、植物ではシロイヌナズナのMRS2遺伝子のうち1つしかなかったが、本研究により、イネから少なくとも2つのMRS2遺伝子にMg輸送体があることを、Mg輸送能欠損酵母であるCM66を用いた機能相補実験で示すことができた。さらに、それらの遺伝子が実際にMg^<2+>を輸送していることを証明するため、Mg-28を利用した吸収実験を行った。Mg-28は、半減期が約20.9時間でβ^-崩壊をする短半減期核種である。製造には、東北大学サイクロトロン・アイソトープセンター(CYRIC)にて加速器を用いて行った。その結果、一度の製造で1MBq程度のMg-28を製造し抽出することができた。これを先のMg輸送体候補遺伝子が導入された酵母に供したところ、2ともMRS2遺伝子ともMg-28を輸送することが判明した。さらに、酵母内のMg-28が細胞外へ輸送される可能性について調べたところ、2つのMRS2遺伝子とも、細胞の中から外への輸送には関わらないことがわかった。これらのことから、今回クローニングしたMRS2遺伝子は2つとも、細胞の外から中へMgを輸送するチャネルであることが示された。これらの遺伝子の発現場所を調べたところ、両者とも幼植物イネにおいて、根、葉ともにmRNAが検出された。今後は、より詳細な発現場所を調べるとともに、細胞内の局在も調べる予定で、そのためのコンストラクトの作成を行った。
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