高等植物ミトコンドリアの動態・形態の仕組みと生物学的意義を探るために、新規ミトコンドリア形態突然変異体のスクリーニングを行った。ここではミトコンドリア分裂変異株であるelm1突然変異体にさらにEMS処理をし、このM2世代のミトコンドリアを顕微鏡観察することで、elm1ミトコンドリア形態異常の抑制化(もしくはさらなる異常化)を指標にして突然変異体を選抜した。1stScreeningにより100個体以上、2ndScreeningにより8系統の突然変異体が取れており、うち3つについて、その原因遺伝子を同定した。これらは、(1)ミトコンドリアが密集する。(2)ミトコンドリアが細胞内の一部に偏在する。(3)ミトコンドリアの大きさが不均一、なもので、うち二つはこれまで機能報告のない未知遺伝子の不全が原因であった。現在これらの機能解析を進めるととともに、他の突然変異体の原因遺伝子同定を行った。三種類の新規遺伝子が同定され、その相補性検定による確認、遺伝子産物の細胞内局在解析、進化学的遺伝子機能推定を行った。 植物ミトコンドリアの融合過程に関する生理学的研究では、独自の検出系を用いた解析によって、ミトコンドリアの融合にATPが必要であることを報告することができた。平成22年度は現有する植物(35Sプロモーター)で観察を行うとともに、胚発生や、植物幹細胞である根や地上部のMeristemの細胞、生殖関連組織、また半数体組織である卵や花粉におけるミトコンドリアダイナミクスを観察するための各種プロモーターの異なる形質転換植物の作製を行い、それぞれの観察を行い、組織特異的なミトコンドリアの形状、数、立体配置の検討などを行うことができた。
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