研究課題
平成22年度は、まず植物フェリチン(ダイズ由来)の立体構造解析を行い、フェリチンにおける鉄貯蔵機構を解析した。その結果、植物フェリチンにおける鉄の取り込みチャネルから鉄酸化部位に至る鉄の移動経路を明らかにした。この経路を構成するアミノ酸残基群(Transit site)は、植物のみならず、脊椎動物のフェリチンにおいても保存されていたことから、動物フェリチンにおいてもこの鉄輸送経路が機能している可能性が考えられた。この仮説を明らかとする為、代表的な動物フェリチンであるヒトH鎖フェリチンおよび、そのTransit site変異体を大腸菌発現系により調製し、X線結晶構造解析による立体構造解析と鉄取り込みに関する反応速度解析を行った。その結果、植物で明らかにしたTransit siteを介したフェリチンにおける鉄取り込み経路は、動物フェリチン(ヒトH鎖)においても共通していることが明らかとなった。これらの成果により、現在まで不明な点が多かったフェリチンにおける金属取り込み機構のうち、鉄取り込みチャネルから鉄酸化部位への移動経路が明らかとなり、この移動経路は生物種を超えて共通している可能性が示唆された。また、鉄以外の希少金属を高度に集積する分子を創出するため、植物フェリチンのN-末端及びC-末端に対する金属特異的ペプチドの導入を行った。その結果、改変型植物フェリチンは、レアメタルの一つであるニッケルを天然型と比較して有意に多く蓄積することが確認された。現在、蓄積金属分子の定量的な解析、反応機構の解析を進めている。
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