研究概要 |
本年度は、新規金属蓄積蛋白質として、ザクロ由来クラスIIIキチナーゼを同定した。本蛋白質は、一分子に約10から20個のカルシウムイオンを結合する性質があり、種子中においてカルシウム貯蔵蛋白質として機能していた。報告者は、当該蛋白質の遺伝子をクローニングし、その特性解析を行い、カルシウム貯蔵様式を提案した(Yang H.et al, Plant J.2011, 68, 765-776)。更に詳細なカルシウム貯蔵機構を明らかにするため、本蛋白質の結晶化を試み、X線結晶構造解析による立体構造解析を目指した。結果として、分解能1.6Åで構造解析に成功し、現在立体構造の情報を基礎としたカルシウム貯蔵機構の解明を行っている。 また、高等植物から進化的に大きく隔たった、海産多細胞緑藻であるアナアオサにおいて、フェリチンが金属の安定な貯蔵に大きく寄与していることを明らかにした(投稿準備中)。この中で、アオサに存在するフェリチンは、高等植物由来のものに類似しており、ヒト由来のフェリチンよりも鉄貯蔵活性が高いことを示した。更に、このアオサフェリチンのX線結晶構造解析による立体構造解析に成功し、植物フェリチン特有のドメインであるエクステンションペプチド領域がフェリチン多量体の安定性と鉄貯蔵、放出機構に関わっていることを明らかにした(Masuda T.et al.Protein Sci.2012, in press)。 新規金属貯蔵蛋白質の設計に関し、植物由来のフェリチンのN,C-末端に金属特異的ペプチドを付加した変異体を作製した。この変異体は、天然型植物フェリチン蛋白質と比較して、ターゲットとした金属元素の蓄積量が約5倍増大し、本研究の目的である、金属特異性の改変を達成したと考えられる(投稿準備中)。
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