研究概要 |
インドールアルカロイドは多様な生物活性をもつ興味深い化合物群であることから、医薬開発のリード化合物としてインドール誘導体の果たしている役割は極めて重要である。筆者は当研究室で開発したキラルなロジウム(II)錯体を用いるα-ジアゾ-β-ケトエステル由来の環状カルボニルイリドと求双極子剤であるインドールとの逆電子要請型不斉1,3-双極付加環化反応を開発すると共に、本反応を機軸とする生物活性インドールアルカロイドの触媒的不斉全合成を検討し、本年度は以下の成果を得た。 1.アスピドスペルマアルカロイドvindorosineの全合成を目指し、分子内の適当な位置にインドールを組み込んだα-ジアゾ-β-ケトエステル由来のエステルカルボニルイリドの分子内不斉付加環化反応を検討した。その結果、目的とする多環式インドール化合物のエンド体のみが最高90%の不斉収率で得られることを見出した。これはエステルカルボニルイリドとインドールとの付加環化反応の初めての例である。また、本付加環化反応では付加環化生成物とカルボニルイリドとの間に平衡が存在するという興味深い知見が得られた。 2.Rh_2(S-TCPTTL)_4存在下、トリクロロエチルエステルを組み込んだα-ジアゾ-β-ケトエステル由来のカルボニルイリドとN-メチルインドールとの逆電子要請型分子間不斉1,3-双極付加環化反応が良好な収率およびエキソ選択性で進行し、エキソ体が97%の不斉収率で得られることを見出した。得られたエキソ体のインドール誘導体から生物活性多環式インドールアルカロイドkopsiloscine Aへの合成を検討している。
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