研究概要 |
インドールアルカロイドは多様な生物活性をもつ興味深い化合物群であることから,医薬品開発のリード化合物としてインドール誘導体の果たしている役割は極めて重要である。筆者は,当研究室で開発したキラルなロジウム(II)錯体を用いるα-ジアゾ-β-ケトエステル由来の環状カルボニルイリドと求双極子剤であるインドールとの逆電子要請型不斉1,3-双極付加環化反応を開発すると共に,本反応を機軸とする生物活性インドールアルカロイドの触媒的不斉全合成を検討し,本年度は以下の成果を得た。 1)付加環化生成物の官能基変換を考慮した酸無水物を組み込んだジアゾ基質を調製し,N-メチルインドールとの分子間不斉1,3-双極付加環化反応を検討した。その結果,ロジウム(II)錯体の架橋配位子のフタルイミド基上の水素原子を塩素原子で置換した錯体Rh2(S-TCPTV)4を用いると,良好なエキソ選択性かつ最高不斉収率88%で目的の付加環化生成物が収率よく得られた。この結果は,酸無水物由来のカルボニルイリドの付加環化反応としての初めての例である。 2)得られた付加環化生成物から,生物活性多環式インドールアルカロイドkopsiloscine Aへの合成を検討した。予期した通り,酸無水物由来の付加環化生成物のオキシブリッジは容易に開裂し,目的のケトンを合成することができた。その後,インドール3位にアルキル側鎖を導入し,さらにシクロプロパンの開裂,Birch還元等を経て五環式化合物までの変換を達成することができた。
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