研究概要 |
本年度において、ねじれたπ平面を有する新規芳香族化合物の合成を目的に研究を行った。まず、新規ヘリセンの合成として、既に合成に成功している室温で安定なキラリティを有する1,8-ジ(1-アダマンチル)ナフタレンの誘導化を行い、3,6-位にブロモ基、ホルミル基を導入した。4位水酸基はメチル、ベンジル、アセチル保護体を合成した。各キラルナフタレン誘導体の加熱によるCD強度減衰からラセミ化障壁を見積もり、3,6-位に置換基を導入すると1kcal/molラセミ化障壁が上昇し、約30kcal/molであった。ナフタレンペリ位のアダマンチル基1つをtBu基に換えるとラセミ化障壁は25kcal/molであった。室温で安定なキラルナフタレン合成にはペリ位に二つのアダマンチル基を導入する必要がある。次に、本法が芳香族キラル化の一般的手法になることを示す目的でペリ位にアダマンチル基を導入したフェナントレンを1,8-ジ(1-アダマンチル)ナフタレンから誘導したベンザインとフランとのDiels-Alder反応により合成した。このフェナントレンは室温で安定なキラリティを有し、ラセミ化の活性化エネルギーは30kcal/molであった。この結果はペリ位への2つのアダマンチル基導入が芳香族キラル化の一般的手法になることを示す。本結果は、平面芳香族を似て非なる三次元構造を有するキラル非平面芳香族へと変えることで物質多様性を増し、会合力の調節等にも応用可能という意義がある。
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