研究概要 |
本研究では光学活性ヘリセンである1,12-dimethylbenzo[c]phenanthrenの環状三量体を組織化して分子シートを合成し,更にこれを積層化することで膜を形成する.標的とする分子シートはグラファイト様の網の目構造の各頂点にヘリセン環状三量体が位置するものである.環状三量体上に分子間結合の形成,不斉情報の伝達,溶解度の調節および積層構造の固定化を担う置換基を効果的に配置する.分子シートは環状三量体上に配置した2,6-ジアミノピリジン構造とナフタレンジイミドリンカーを用いて構築する.さらに,分子シート上で次の分子シートを形成することで秩序だった積層構造を構築する.本年度は,以下の課題を検討した. (1)水素結合形成部位を持つヘリセン環状三量体の合成:1,12-dimethylbenzo[c]phenanthrenとメタフェニレンがアセチレンで交互に連結されたヘリセン環状三量体の合成法が既に確立されている.本年度は,この化合物のメタフェニレン上に配置されているデシルオキシカルボニル基を水素結合形成部位である2,6-ジアミノピリジン構造に置き換えた環状三量体の合成を達成した。 (2)リンカーとなるナフタレンジイミド誘導体の合成:イミドの窒素原子がアルキル化されていないナフタレンジイミド誘導体は非極性溶媒に対する溶解度が低いことが知られている.ヘリセン環状三量体との水素結合形成は非極性溶媒中で行うことを想定しているのでこの問題を解決する必要があった.検討の結果、ナフタレン環上にアルキルアミノ基を有するナフタレンジイミドを合成することが出来た。
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