本年度は,種々の置換基を導入したエポキシドを有するイミニウム塩を合成し,その反応を検討した. エポキシシランとイミニウム塩の間に二重結合を導入した基質(イミニウムの窒素上の置換基はメチル基およびt-ブチル基,カウンターアニオンはトリフレート)と塩基との反応を検討したところ,目的の反応は一部進行するものの,同時にシリル基の脱離が進行して不飽和アルデヒドが生成した.種々の捕捉剤を検討したが,カルベンが捕捉された成績体を得ることは不可能であった.そこでまずは,イミニウムイオンのビニルプロトンの脱プロトン化の条件を詳細に検討するため,シリル基をアルキル基などに置換した化合物の反応を検討することにした.この基質の場合,エポキシドの開環によって生成するアルコキシドがケテンイミニウム部を攻撃するなど,新しい形式の反応が進行する可能性もあると考えた.フェニル基を有する基質は合成することができたが,非常に不安定であり,30分以内に分解した.次に,イミニウム側のエポキシド炭素にシアノ基やフェニル基などの電子求引基を導入することを考えた.シアノ基を有する基質としては,二重結合を導入したものと導入しないもの,双方の前駆体であるアルデヒドは合成できたものの,イミニウム塩への変換が不可能であった.フェニル基を有する基質は二重結合を導入したものについては合成可能であり,これを反応に付したところ,新規化合物が得られた.しかし,この化合物は非常に不安定であり構造決定に至らなかった.現在種々の捕捉剤を検討している.
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