研究課題
北里研究所において天然物ライブラリーを対象とした抗マラリア活性化合物探索スクリーニングを行った結果、ヒドロキシアパリシンに強力な抗マラリア活性を有することが新たに発見された。ヒドロキシアパリシンは南アフリカ原産植物Tabernaemontana elegansより単離された4環性インドールアルカロイドである。ヒドロキシアパリシンの相対構造は詳細なNMR解析により決定されているが、絶対構造は未決定である。アパリシン類の最初単離から40年が経過したが全合成例はヒドロキシアパリシン類縁体のラセミ体合成のみであった。本研究課題の成果としてアパリシン類の合成に有効な新規ワンポットカスケード型環構築法の開発に成功し、更に本手法を用いてヒドロキシアパリシンの初の全合成を達成した。新規ワンポットカスケード型環構築法はアパリシン類に特徴的な構造である擬アミナール部位を含む6,8員環を一挙に構築する4反応を組み合わせたカスケード反応である。ヒドロキシアパリシン環化前駆体にアジド基を導入し、これに対してStaudinger反応によりイミノホスホランを生成させた後、HCHOを用いたAza-Wittig反応により、Schiff塩基へと変換し、続く分子内N-アルキル化及びインドールの3位での分子内Mannich反応により歪んだ2環部分を一挙に構築することを可能とした。この方法はアパリシン類のすべての類縁体に適応できる。実際に過去の合成例では歪んだ2環部分の構築が困難であり、全体的な低収率化を招いていたが、今回確立した手法は、全合成の最終段階で利用することがでたため、効率的なヒドロキシアパリシンの不斉全合成の達成が実現した。
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