研究概要 |
ヘテロ環は天然に存在する主要な骨格の一つであり、その官能基化は多様な化合物を合成する上で重要である。1,4-エポキシ-1,4-ジヒドロナフタレンは縮合型ヘテロ環であり、フランと種々ベンザインとの反応により容易に合成でき、ナフタレン前駆体として有用である。しかし、酸性条件下では酸素-炭素結合部の開裂により生じるカチオン中間体が不安定であり、求核種でトラップすることは出来ないことが通説であった。そこで、橋頭位に当たる1ならびに4位に置換基を導入することで中間体の安定化に成功し、安価無毒な鉄触媒により促進されるアリル基(Synlett 2010,14;2151.:前年度報告書に記載)・シアノ基・アジド基導入法として確立した(詳報を現在作成中)。この手法は、従来の遷移金属を用いた手法で問題となる非対称基質への位置選択的官能基化を可能とし、多種ナフタレン誘導体の簡便合成法として生物活性物質ならびに機能性材料合成への応用が期待される。また、単環ヘテロ環であるテトラヒドロフラン環の炭素-酸素部の開裂を伴った初めての触媒的アジド化ならびにアリル化法を開発した。テトラヒドロフランは安定構造を有しており、従来法では過酷な条件を必要とした。今回、鉄触媒存在下、室温で収率良く反応が進行することを見出し、フタランならびにラクトン誘導体へ適応することで、高官能基化された鎖状化合物の系統的合成法へと展開した(論文作成中)。更に、金試薬の新たな機能性を見出し、様々な基質のベンジル位への直接的アジド導入反応の効率化にも成功した。これら反応は、従来法では合成困難な、または工程数を必要する重要化合物を簡便に合成できる。そのため、有機合成の発展に貢献できることが期待される。
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