研究概要 |
本研究は,過剰に産生されるTNF-αにより惹起される種々の疾病の予防・改善作用を有する医薬シーズの探索研究において,簡便かつ有用なスクリーニング手法であるマウス由来線維芽細胞であるL929細胞を用いたTNF-α感受性低減作用試験を構築し,本手法を用いて世界各地の伝承・伝統薬物および薬用食品などの天然資源素材の抽出エキスライブラリーについてスクリーニング試験を実施するとともに,これらに含有される活性成分を探索することを目的とする.加えて,見いだされた活性成分について,各種類縁体合成を実施し活性発現の必須構造や構造活性相関研究へと繋げ,医薬シーズとしての提案ができるべく検討を重ねる.また,過剰なTNF-αにより惹起される疾病モデルとしてGalN/LPS誘発肝障害モデルマウスを用いた肝保護作用について検討する. 平成23年度は,平成22年度に実施した約120種の世界各地の伝承・伝統薬用植物および薬用食品素材の抽出エキスライブラリーのL929細胞を用いたTNF-α感受性低減作用やその作用点に関与する炎症性サイトカインであるNO産生抑制活性試験から見いだした候補素材について,その活性寄与成分を探索した.その結果,薫香生薬の乳香(Boswellia carterii 樹脂)および数種のタイ天然薬物(Kaempferia parviflora 根茎,Shorea roxburghii 樹皮およびMemmea siamensis 花部)から種々の活性寄与成分を見いだした.とりわけ,S.roxburghii 樹皮から得られたオリゴスチルベノイド類は,GalN/LPS誘発肝障害モデルマウスを用いたin vivo肝保護作用試験においても活性が認められ,植物ポリフェノールのひとつであるスチルベノイドの新たな機能性を明らかにした.
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