研究概要 |
1価のヨウ素試薬には「ヨード化能」と「酸化能」の2つの性質を併せ持つにも拘らず、従来のヨード環化反応では前者の特性のみに焦点を当て、後者の性質をも利用した反応については皆無であった。今回私は、プロパルギルヒドラジド類を基質とするヨード環化反応を通してヨウ素試薬の「酸化能」の制御が可能であることを見出した(Org.Lett.2010,12,3506)。本ヨード環化反応は反応条件により酸化的芳香化を制御した初めての例である。また本手法は、共通の基質から2種の化合物(ピラゾールとその2,5-ジヒドロ体)を作り分けできる点で系統的合成の観点からも効率的である。また、ヒドロキシルアミン類を基質とした場合においても、先と同条件にてイソキサゾールとその2,5-ジヒドロ体を選択的に合成できることも明らかにした(J.Org.Chem.2011,76,3438)。なお本法はこれまでに報告例のない多置換2,5-ジヒドロイソキサゾール合成法の初めての例であり、本反応をCOX-2阻害薬valdecoxibとその2,5-ジヒドロ体の合成に応用した。更に本コンセプトをプロパルギルグリシン類のヨード環化反応へと展開し、近年不斉有機触媒として注目されているプロリン誘導体の多様性に富む合成法を確立することに成功した。なお本反応はヨウ素試薬のリガンドを変えるのみで反応生成物を作り分けた初めての例であり、リガンド効果により1価のヨウ素試薬の反応性をコントロールできることを指し示した興味深い知見とも言える(投稿準備中)。また本研究の遂行中、o-イソシアノフェニルアセタール類をLewis酸と塩基の組み合わせ条件で処理すると、転位-カルボアルコキシ化のタンデム反応が進行してベンゾオキサゾールが得られることを発見した(Org.Lett.2012,14,708)。
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