本年度は、アルキンに共役したオキシムエーテルの多様な反応性を活用したラジカル種および有機金属試薬との位置および立体選択的共役付加反応を検討した。 はじめに、碓にエステル部を有するアルキニルオキシムエーテルへのトリエチルボランをラジカル開始剤とした炭素ラジカル付加反応を検討した。その結果、プロトン化剤としてMeOHを添加し、-80℃で反応を行った場合に、位置選択的かつ立体選択的にβ-付加体が得られた。本反応過程で、反応中間体としてボリルアミノアレンが生成していることが考えられる。そこで、次に求電子剤として種々のアルデヒドを用いてボリルアミノアレンを捕捉することを試みた。脂肪族アルデヒドを用いるドミノ型ラジカル付加-アルドール型反応を検討したところ、2級および3級ラジカルとの反応においては、ラジカル付加、アルドール型反応およびラクトン化が連続的に進行し、ラクトン体が選択的に得られた。次に、有機金属試薬を用いて求核付加反応を検討した。はじめに、Et_2CuLiを用いたアルキニルオキシムエーテルへの求核付加反応を行った。その結果、興味深いことに、ラジカル反応とは付加する位置が逆転しα位にエチル基が導入された付加体が75%の収率で得られた。さらに、Et_2CuLiとの反応後、同一反応容器内へ求電子剤を加えることにより、中間体アレノレートをワンポットで捕捉することを検討した。すなわちMeIまたは、BzClを用いて反応を行ったところ、効率よく反応は進行し、4置換オレフィンが収率良く得られ、一挙に複数の炭素-炭素結合を構築することに成功した。最後に、位置選択性の逆転現象を解明するために、計算化学を用いて、遷移状態や活性化エネルギーなどを検討した。その結果、熱力学的にも速度論的にも、その位置選択性の逆転を説明できることが、明らかとなった。
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