研究概要 |
共役イミン類は、付加反応における求電子剤としての性質のみでなく、環化付加反応や窒素原子が求核剤として働くなど多様な反応性をもつ有用な合成素子である。そこで今年度は、共役オキシムエーテルへのラジカル付加反応によって生成するN-ボリルエナミンを新たなドミノ型反応へ展開する目的で[3,3]-シグマトロピー転位を含むドミノ型反応の開発を目指し、酸素原子上にフェニル基を有する共役オキシムエーテルへのラジカル付加反応を検討した。 はじめに、β位にエチルエステルを有する共役オキシムエーテルを基質として用いて、ドミノ型反応を検討した。ジクロロメタン還流中、ルイス酸としてトリメチルアルミニウム及びラジカル開始剤としてトリエチルボランを加えて反応を行ったところ、期待どおり、エチルラジカル付加反応に続いて、[3,3]-シグマトロピー転位が進行した生成物benzofuro[2,3-b]pyrrole-2-oneが、17%と低収率ではあるが得られた。次に収率の向上を目指し、様々な反応条件を検討した。その結果、溶媒としてベンゼンを用いて、還流条件下反応を行った場合に、64%の収率でbenzofuro[2,3-b]pyrrole-2-oneが得られることが、明らかとなった。さらに、エチルエステルの代わりに様々なカルボン酸誘導体を用いて本反応を検討した。その結果、ペンタフルオロフェニルエステルを有する共役オキシムエーテルを基質とした場合に、88%と最も良い収率でbenzofuro[2,3-b]pyrrole-2-oneを与えることが明らかになった。benzofuro[2,3-b]pyrrole骨格は、これまで合成研究がほとんどなされてなく、生物活性評価を含めた今後の展開が期待される。
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