インターフェロン-γ(IFNγ)はその生理活性から、癌やウイルス感染などに対する有用な治療薬として適用されることが期待される。IFNγの治療への適用には持続的なIFNγの供給を可能とする遺伝子治療が望ましいが、一方で持続的にIFNγが全身で非特異的に作用することで、標的部位以外における重篤な副作用が懸念される。本研究では細胞表面に高い接着能を持つextracellular superoxide dismutase由来C末端ヘパラン硫酸結合ドメイン(HBD)をIFNγに融合したIFNγ誘導体をデザインし、これを発現するプラスミドベクターを用いてin vivo遺伝子導入を行なうことで、遺伝子導入部位でのIFNγ濃度を選択的に高め、治療効果の増強と副作用の軽減が可能なシステムを開発した。前年度の検討において、HBDを用いることでIFNγ濃度を遺伝子導入部位である肝臓で特異的に増大することが可能であることを見出していた。そこで、本年度はその作用機序をより詳細に評価するとともに、HBD融合IFNγの利用による治療効果について検討した。まず、HBDと細胞外マトリクスとの結合を阻害するヘパリンを用いた検討から、HBD融合IFNγは細胞外マトリクスと相互作用していることを確認した。また、天然型IFNγあるいはHBD融合IFNγ発現ベクターを投与量を変化させて投与したときの肝臓におけるIFNγの生物活性を評価したところ、HBD融合IFNγ発現ベクターが天然型IFNγ発現ベクターと同等の生物活性を得るには約10倍の投与量が必要であった。肝転移腫瘍モデルにおいて治療効果と有害作用を評価したところ、天然型IFNγ発現ベクター投与群では体重減少などの有害作用が認められたが、HBD融合IFNγ発現ベクター投与群では有害事象は認められず、天然型IFNγ発現ベクターと同等以上の抗腫瘍効果を示した。
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