本研究の目的は、I型ペプチドトランスポーター(PEPT1)による効率的な細胞内送達を利用した新規代謝捕捉型放射性分子プローブの開発であり、これにより腫瘍の高精度、高感度イメージングを目指す。 平成22年度は、phenylalanineを含むジペプチドがPEPT1に基質として強く認識されることに着目し、本分子にペプチド結合を介して2-[^<18>F]fluoronicotinic acidを導入した化合物(2-[^<18>F]FNA-Phe)を合成した。すなわち、2-[^<18>F]fluoronicotinic acidとphenylalanine誘導体との縮合反応を基盤とし、2-[^<18>F]FNA-Pheを、減衰補正後の放射化学的収率19%、放射化学的純度99%以上にて得た。さらに、PEPT1が多く発現しているヒト膵臓癌細胞(AsPC-1)の培地中に2-[^<18>F]FNA-Pheを添加したところ、37℃、pH6の条件下で細胞への放射能集積が経時的に増加し、インキュベート開始60分後における取込み量は11.0%/mg proteinであった。一方、本取込みはPEPT1の基質であるglycylsarcosineの同時添加によって有意に阻害され、また、pH5.5の条件下では26%/mg proteinにまで上昇したことから、基質の輸送にプロトン勾配を利用するPEPT1を介し、2-[^<18>F]FNA-PheがAsPC-1に取り込まれることが示唆された。以上の結果から、2-[^<18>F]FNA-Pheの、PEPT1を利用した腫瘍選択的イメージングプローブとしての可能性が示された。 また、AsPC-1をBALB/cヌードマウスに皮下接種することで担癌モデルの作製に成功し、腫瘍イメージングの有用性を動物実験で検証する環境を整備した。平成23年度はPEPT発現腫瘍を標的とした分子プローブの評価を、動物を用いて実施する。
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