高脂肪食摂取・肥満モデルマウスの脳内レドックスの変動について、本年度は、下記の2点について検討を行った。 (1)肥満モデルマウスの病態形成、及び認知機能評価 動物は、C57/BL6(雄性、8週齢)を用い、日本クレア社のHFD-32を8週間摂取させた。高脂肪食摂取群では、通常食摂取群と比較して、明らかな体重増加が認められ、肥満症の発症が確認された。また、グルコーストレランステストを実施したところ、高脂肪食摂取群では耐糖能異常が形成されていることが分かった。脳機能について、放射状水迷路を用いて評価したところ、肥満群のみ学習障害が確認された。 (2)肥満マウスにおけるミトコンドリア機能・レドックス変動の解析 肥満モデルマウスにおいて、認知機能の低下が認められたことから、そのメカニズムとしてミトコンドリア機能の解析を行った。ミトコンドリアは、神経活動時に必要となるATP合成を担うオルガネラである一方、その反応の過程で電子の漏れがあり、活性酸素種の生成が起こる。まず、ATP量の変動について検討したところ、通常食、高脂肪食摂取群ともにそのレベルに変動は認められなかった。酸化ストレスの指標である、血漿中脂質過酸化物の蓄積は、高脂肪食摂取群で認められた。 以上の結果から、耐糖能異常にも関わらず脳内ATPに変動が認められなかったことから、ミトコンドリアのATP合成系に負荷がかかっているのではないかと考えている。今後は、この新たな作業仮説のもと、さらに詳細にミトコンドリア機能の解析を行い、それに引き続くレドックス破綻について検討を行う予定である。
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