研究概要 |
本年はナノコンポジットを安定に調製可能な手法の確立に取り組み、超臨界流体を用いた晶析、球形晶析法などに取り組んだ、その結果、エタノール溶媒に溶解可能な難水溶性薬物の場合は、噴霧乾燥法が最も簡便、高収率かつ安定に機能性粒子を調製可能な手法であることを見出した。難水溶性の医薬品としてflurbiprofen (FP)を用いて糖転移ヘスペリジン(α-glucosyl hesperidin : Hsp-G)との噴霧乾燥物を調製したところ、溶出試験において溶媒のpHに依存することなく常に顕著な溶出性の改善が認められ、Hsp-GとFPとの間で特異な構造が形成される可能性が示唆された。また、FPの吸収量の顕著な増大も認められた(Int.J.Pharm., 392, 101-106,2010)。probucol (PRO)と糖転移ステビア(α-glucosyl stevia : Stevia-G)との噴霧乾燥物においてもPRO原末と比較して9.8倍のAUCを示した。一方、Hsp-Gとの噴霧乾燥物も5.2倍のAUCを示した。FPを用いて同様の実験を行ったところ、吸収性改善効果に及ぼす影響は逆転し、Hsp-Gの噴霧乾燥物がStevia-Gの噴霧乾燥物と比べて高い吸収量を示した。したがって、用いる糖転移化合物によって薬物吸収量に違いが認められたことから、対象となる薬物の構造などの特性に応じて添加剤を使い分けることにより、溶解性および吸収性の効率的な改善が期待される(Euro J.Pharm.Biopharm., 76, 238-244, 2010)。現在、糖転移化合物によって形成される水中でナノ集合体の構造、およびその可溶化機構に関して、NMRを用いた解析および蛍光分光法を用いた解析を行っており、成果を投稿中である。
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