研究概要 |
本研究は2型糖尿病に対して有効かつ安全な治療法開発を目指すものである.すなわち,強力なインスリン分泌機能ならびに神経保護作用を有する新規機能性ペプチド誘導体を戦略的に開発し,それを粉末吸入製剤として実験的2型糖尿病モデル動物に気道内投与することで,「インスリン分泌促進による血糖コントロール」ならびに「抗アポトーシス活性による膵β細胞疲弊抑制」の2者を同時に達成するとともに,吸入療法を主軸とした新規治療方法開発に寄与しようとするものである. 1.固相ペプチド合成技術による新規機能性ペプチド創製 glucagon-secretin family peptides構造活性相関情報に基づき,(a)特定されたアミノ酸の置換,及びアミノ末端あるいはカルボキシル末端のアミノ酸を削除あるいは追加した種々のペプチドをデザインし,固相合成法によって化学合成した. 2.各種物性・活性評価ならびに高機能性ペプチドの選択 合成されたペプチドについて膵β細胞を用いたcAMP産生作用ならびに受容体結合活性を評価し,さらに抗アポトーシス機能についても精査して有用性を比較検討した.さらに高次構造を評価し,更なる構造活性相関情報を探り,本情報を反映させた新規機能性ペプチドのデザインを試みた. 3.実験的2型糖尿病モデル動物の構築ならびにバイオマーカーの探索(I) 2型糖尿病における膵機能低下を再現すべく,新生児ストレプトゾトシン誘発糖尿病モデルラットを作製し,血中の炎症・アポトーシス関連バイオマーカー(LDH,単核球由来ペルオキシダーゼ,カスパーゼ,活性酸素種)をLC/MS, ELISA,その他各種生化学的手法を用いて検出し,どちらがより2型糖尿病の病態にふさわしいものであるか精査した.
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