Small interfering RNA (siRNA)を用いたRNA干渉法は、核酸医薬の創薬において最も実用化に近い技術として注目を集めているが、その医療応用には核酸デリバリーシステムの開発が欠かせない。本研究課題では、siRNA全身投与によるがん治療を実現しうるデリバリーシステムの構築を目指し、ナノDDS技術とsiRNAの化学修飾技術の融合によって斬新なナノ粒子の開発を試みた。siRNAベクターとしては、dicetylphosphate-tetraethylenepentaamine (DCP-TEPA)を主成分とし、ポリエチレングリコール(PEG)およびArg-Gly-Asp (RGD)ペプチドでナノ粒子の表面を修飾した全身投与型のポリカチオンリポソーム(TEPA-PCL)を用いた。siRNAの化学修飾は、コレステロールをsiRNAのセンス鎖3'末端に共有結合によって付加した。TEPA-PCLとsiRNAの複合体形成状態をゲル電気泳動法で検討したところ、siRNAにコレステロールを付加することによってTEPA-PCLとsiRNAの複合体が安定化することを見出した。次にsiRNAの化学修飾がRNA干渉効果に与える影響について培養細胞を用いたin vitro試験において検討した。ルシフェラーゼを恒常的に発現するA549ヒト肺がん細胞を用い、ルシフェラーゼ遺伝子のノックダウンを指標にRNA干渉効率を評価した。TEPA-PCLを用いてsiRNAを導入した結果、末端の化学修飾によってノックダウン効率が低下しないこと、ならびに細胞毒性を示さないことが明らかとなった。そこでTEPA-PCLに搭載した^<18>Fポジトロン標識siRNA(コレステロール結合型)をマウスに尾静脈内投与し、その体内動態をポジトロン断層法で解析した。その結果、全身投与型ベクターに搭載したsiRNAでは全身からの強いシグナルが検出され、PEG修飾の特徴である長期血中滞留性を示すイメージデータが得られた。本年度の研究成果を基にし、次年度はin vivoにおけるRNA干渉効果について検討を実施する計画である。
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