本研究では、動脈プラークに存在するマクロファージや泡沫細胞を特異的に認識する抗LOX1抗体を導入したイムノリポソームを新規DDSとして作製し、動脈プラークの治療戦略の一端を検討した。リポソームの粒子径は動脈プラーク発症部位への薬物送達効率を決定付ける極めて重要な要素となるため、まず、血中から動脈プラーク内に移行可能なリポソームの粒子径の判別を行った。その結果、マウス腹部大動脈の動脈プラークには、粒子径100~200nmのリポソームが集積しやすいことが明らかとなった。そのため、粒子径150nmの抗LOX1抗体修飾イムノリポソームを調製し、マクロファージおよび泡沫細胞によるin vitro取り込み実験を行った。その結果、両細胞による抗LOX1抗体修飾イムノリポソームの取り込みは、いずれも未修飾リポソームの取り込みに比べ有意に高値であった。また、この抗LOX1抗体修飾イムノリポソームに動脈プラーク縮小作用を有する抗炎症薬デキサメタゾンを封入し、in vitroでマクロファージおよび泡沫細胞に適用したところ、未修飾に比べ有意に高い泡沫化抑制作用が認められた。さらに、抗LOX1抗体修飾イムノリポソームを動脈プラークモデルマウスに静脈内投与したところ、未修飾に比べ有意に高い動脈プラークへの送達効率が得られ、デキサメタゾンを封入した抗LOX1抗体修飾イムノリポソームを同様に長期投与したところ、未修飾に比べ有意なプラーク縮小が観察された。以上のことから、抗LOX1抗体修飾イムノリポソームはマクロファージおよび泡沫細胞が存在する動脈プラークへの薬物送達能に優れ、動脈プラークの治療に有用な薪規DDSであることが示された。本研究の成果は、抗LOX1抗体修飾イムノリポソームが動脈プラークの治療戦略として魅力的なDDSであることを示唆しており、今後の臨床応用への期待が大きい。
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