研究概要 |
2,2,6,6-テトラピペリジン-1-オキシルを修飾したポリアクリル酸(分子量2000および450000)(TEMPO-PAcA)を作製した。元素分析によってTEMPOの修飾率を決定したところそれぞれ46.3%および49.0%であった。作製したポリアニオンであるTEMPO-PAcAとポリカチオンであるポリアリルアミン(PAA)、ポリエチレンイミン(PEI)もしくはポリジアリルアンモニウム塩酸塩(PDDA)を用いて交互累積膜を作製した。膜の作製および崩壊はサイクリックボルタンメトリ(CV)および電気化学水晶振動子ミクロバランス(EQCM)法で行った。 QCM法の結果から分子量2000のTEMPO-PAcA/PAAの交互累積膜以外は積層操作数とともに、共振周波数が増加確認された。この結果から、TEMPO含有交互累積膜が作製できることがわかった。(TEMPO-PAcA)_4/TEMPO-PAcAについてEQCM法により観察すると一掃引目に+700mVに大きなピークが観察されて二掃引目ではピークが大きく減少することがわかった。さらに、酸化反応と同時に共振周波数変化の増加が確認できた。これらの結果から、TEMPOの酸化によって正電荷とポリカチオンが反発することによって膜が崩壊することが示された。また、TEMPO含有薄膜の積層操作後に+700mVの電位を印加したところ、(TEMPO-PAcA/PEI)_4/TEMPO-PAcAおよび(TEMPO-PAcA/PDDA)_4/TEMPO-PAcAの崩壊率は、PAcA(Mw2000)では62.5%および46.1%、PAcA(MW450000)では25.8%および2.72%であった。これらの結果から、電荷の反発よる崩壊は分子量や使用する高分子材料によって大きく変化することがわかった。また、もっとも崩壊したのはPAcA(Mw2000)/PEIであることが示された。これは分子量が小さいと崩壊しやすいと同時に一級アミンが少ないPEIは反発によって崩壊しやすいためと推察される。
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