本年度は吸入特性に優れるとともに非侵襲的な肺内送達量評価を可能とする近赤外蛍光ラベル化抗癌剤粉末吸入製剤の開発のため、調製条件の最適化を行うとともに、マウス肺内投与後の肺内送達量ならびに抗癌剤の組織分布についてin vivoイメージングシステムにより評価した。賦形剤としてマンニトール、分散補助剤としてロイシン(Leu)、近赤外蛍光ラベル剤としてインドシアニングリーン(ICG)、抗癌剤としてドキソルビシン(DOX)を含む近赤外蛍光ラベル化抗癌剤粉末吸入製剤を噴霧急速凍結乾燥法により調製した。走査型電子顕微鏡観察から調製した粉末製剤は多孔性に優れた直径約20~30μmの球状微粒子であることを確認した。カスケードインパクターによる吸入特性評価からLeuの添加量依存的に粉末製剤の分散性および肺送達性が顕著に向上し、Leuの添加量が20%(w/w)の際に最も優れた吸入特性が得られた。またin vitro抗癌活性評価より調製後の粉末製剤においても調製前と同等の抗癌活性が保持されていることが明らかとなった。肺内投与後の個々のマウスにおけるICGおよびDOXの体内動態評価について、in vivo肺内送達量評価(ICG)とex vivo肺内分布量評価(ICGおよびDOX)の3者間でそれぞれ有意な相関が認められたことから、ICG由来の蛍光検出によるin vivo肺内送達量評価によって肺内DOX送達量を厳密に評価できることが確認された。また調製した粉末製剤は同組成の溶液製剤と同様の体内分布を示すことが明らかとなった。以上、Leuの添加量を最適化することで吸入特性に優れた近赤外蛍光ラベル化抗癌剤粉末吸入製剤の開発に成功するとともに、in vivo近赤外蛍光イメージングによる肺内送達量評価の有用性を明確にすることができた。
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