昨年度は、ウィルス感染時にマウス造血幹細胞(HSC)がI型およびII型Interferon(IFN)依存的に活性化すること、この活性化に、樹状細胞(DC)やNK細胞だけではなく、他のIFN生産細胞も関与する可能性を明らかとした。さらに、本年度は、定常状態では骨髄細胞のLinage-CD150+CD48-分画のさらにc-Kit+Sca-1+分画に濃縮されているHSCが、ウィルス感染後は、マーカーが変動する(Linage-CD150+CD48-分画のc-Kit+Sca-1+分画またはc-Kit+Sca-1bright分画に存在)こと、また、ウィルス感染後のHSC細胞周期は、c-Kit+Sca-1+分画では著しい進展が認められるが、c-Kit+Sca-1bright分画ではほとんどが静止しているという新たな実験結果が得られた。 このことから、ウィルス感染時、DCがIFNを生産しHSCに作用することによってHSCの細胞周期を進展および静止している以外に、他の免疫細胞や非造血系細胞がHSCの細胞周期の制御に関与している可能性が考えられた。そこで、本年度は、多様な細胞から生産されるIFNがHSCに作用する生物学的意義に着目し以下の結果を得た。 1)HSCのmobilization:IFNAR1-/-IFNGR1-/-HSC(LSK CD150+CD48-細胞)は、野生型HSCと比較し、脾臓へのmobilizationが亢進している事が明らかとなった。このmobilizationは、ウィルス感染よってさらに顕著に誘導された。 2)HSCの維持:ウィルス感染時、細胞周期が静止しているHSCが存在していることを明らかとした。この結果から、IFNが作用しても、静止期状態のHSCが一定数必ず残る可能性が考えられた。そこで、この静止期維持機構を明らかとする目的で、IFNのネガティブフィードバック因子であるSuppressor of cytokine signaling 1/3(SOCS1/3)の関与に着目し検討したところ、IFNが直接HSCに作用しSOCS1/3mRNA発現を誘導することが明らかとなった。
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