研究課題
ホスファチジルイノシトール3,5-二リン酸の中枢神経系における髄鞘形成の詳細な制御機構を明らかにするために、神経細胞、およびグリア細胞で特異的にホスファチジルイノシトール3,5-二リン酸合成酵素であるPIPKIII遺伝子を欠損するマウスを作製した。神経細胞で特異的に遺伝子欠損を導く事のできるtau-Creトランスジェニック(Tg)マウスとの交配の結果、神経細胞特異的なPIPKIII遺伝子欠損マウスは出生10日後までに死亡し、中枢神経系の全ての細胞種で遺伝子欠損を導いた場合よりも重篤な予想外の表現型が認められた。一方で、MBP-Cre Tgマウスとの交配で作製したオリゴデンドロサイト特異的なPIPKIII遺伝子欠損マウスは、加齢とともにほぼ全例で両側性の下肢痙性麻痺を発症するというヒトの遺伝性痙性対麻痺に似た、大変興味深い病態を示した。今後、発症の分子機構について詳細な解析を予定している。ホスファチジルイノシトール3,5-二リン酸の筋肉細胞における糖代謝制御機構を明らかにするために、筋肉特異的PIPKIII遺伝子欠損マウスを用いた解析を行った。高脂肪食負荷による肥満モデルにおいては、耐糖能試験の結果、インスリン抵抗性の改善が認められた。この結果はインスリン抵抗性を伴う糖尿病の治療薬の新たな創薬標的分子としてPIPKIIIが有用であることを示唆するものである。今後、PIPKIII欠損によるインスリンシグナリングへの影響の解析を予定している。
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Nature
巻: 465 ページ: 497-501
J.Lipid Res.
巻: 51 ページ: 1424-1431