1.ポリアミンにより翻訳促進を受ける遺伝子、ポリアミンモジュロンとなる転写因子の同定を目指すため、ポリアミン生合成阻害剤存在下でヒトHeLa細胞株を培養し、ポリアミン枯渇細胞を作製した。その細胞から核抽出液を調整し、プロテイン-DNAマイクロアレイを行った。正常細胞と比べてポリアミン枯渇時に核内の量が減少する転写因子のスクリーニングを行った。ポリアミンモジュロンとして、転写因子が同定されたならば、その下流にある遺伝子発現制御がポリアミンによる細胞増殖制御の一部を担う可能性がある。現在、いくつかの転写因子を候補をとして同定した。今後、これらがポリアミンモジュロンとなるかどうかの判定を行っていく予定である。 2.ポリアミンが唯一翻訳後修飾するeIF5A蛋白質及びその翻訳後修飾を担う酵素であるデオキシハイプシン合成酵素(DHS)のジーントラップマウスの解析を行った結果、ともに胎生致死を示した。胎生致死の時期はポリアミン生合成酵素遺伝子ノックアウトマウスと同様、子宮への着床後すぐに胚の確認が出来なくなる初期胚のステージであり、これらが生命誕生に必須であることが明らかとなった。 3.ポリアミン代謝により発生するアクロレインが、血中においてアルブミンのリジン残基に付加したポリアミン抱合蛋白質(PC-ACR)として質量分析法の解析により同定した。そして、PC-ACRの生成はアクロレインによる細胞増殖阻害を防ぐ役割を担っていることが示唆された。
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