1.ポリアミン生合成阻害剤存在下でヒトHeLa細胞株の培養を行い、ポリアミンの枯渇した細胞を作製した。その細胞から核抽出液を調整し、プロテイン-DNAマイクロアレイを行い、ポリアミン枯渇時に核内の量が変化する転写因子のスクリーニングを行った。その結果、14種の転写因子を同定した。これらの転写因子の活性が本当に変化しているかどうかをEMSA法により、検討を行ったところ、PU.1という転写因子がポリアミン枯渇時の核内で活性化されていることを確認した。この転写因子は血球系の分化に重要な因子であり、ポリアミンによる細胞分化の制御機構において必要とされている可能性が示唆された。 2.ポリアミンの分解によって産生されるアクロレインは細胞障害性疾患である脳梗塞時に検出される毒性成分である。脳梗塞時には活性酸素種(ROS)も産生されるが、アクロレインの方がより強い障害活性をもつことを明らかにした。また、細胞内でポリアミンが主に相互作用しているRNAに対して、ROSとアクロレインによって分解が引き起こされるかどうかを検討した結果、ROSによってのみ、分解されることがわかった。そこで細胞障害時のモデルとして、細胞内で産生したROSが、RNAの分解を促進して相互作用していたポリアミンを遊離させ、ポリアミン分解によるアクロレイン産生を導くモデルが提唱された。
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