PGAM5は、ヒスチジン残基を活性中心とする全く新しいタイプのセリン・スレオニン特異的ホスファターゼとして機能する。さらに分子N末端側に存在する膜貫通ドメインを介しておもにミトコンドリアに局在することが報告されている。しかし、ミトコンドリア内でのPGAM5の局在は詳細には解析されていなかったため、本研究においてその詳細を検討した。単離ミトコンドリアを用いたプロテアーゼに対する感受性アッセイや、ミトコンドリア膜画分のショ糖密度勾配遠心分離によるさらなる分画実験により、PGAM5はおもにミトコンドリア内膜に局在することが明らかとなった。一方で我々は、ミトコンドリアの膜電位低下にともなってPGAM5はそのN末端が切断されることを示唆するデータを得ていた。今回、切断型PGAM5のN末端アミノ酸配列をエドマン分解法によって解析したところ、切断部位が膜貫通ドメイン内に存在すること、すなわち膜内切断を受けることが示唆された。さらに切断部位の確認と切断型分子の局在を検討することを目的に、切断によって露出するアミノ酸配列を抗原とした断端認識抗体を作製した。その結果、ミトコンドリアの膜電位低下にともなって確かに膜貫通ドメイン内でPGAM5が切断されることが確認された。現在、PGAM5によるスプライシング制御においても、この分子内切断が重要な役割を担っているものと予想し、断端認識抗体を用いた切断型分子の局在を検討するとともに、切断制御機構の解析を進めている。
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