プロテアソームはユビキチン化されたタンパク質を分解することにより、すべての真核生物で必須の役割を果たしており、特有の生命現象(神経、免疫、癌、老化)に関わっていることが知られている。26Sプロテアソームはタンパク質分解を実行する20Sプロテアソームの両端に、調節ユニットである19S制御因子が会合した分子量約2.5MDaの巨大な複合体であり、総数70余りのサブユニットが集合して構成される。我々はプロテアソームの形成を支援するシャペロン分子をいくつか同定し、その形成機序の一端を明らかとしたが、全てを理解できた訳ではない。本課題では、プロテアソームの分子集合機構を詳細に解析すると共に、プロテアソーム形成の全容を明らかにすることを目的とし、特にプロテアソームのlidの形成機構の解明に焦点を当てた。 HEK293T細胞においてlidサブユニットをノックダウンし、細胞抽出液をグリセロール密度勾配遠心により分離し、分画を抗lidサブユニット抗体を用いてウェスタンブロットを行ったところ、形成過程のlidが蓄積していることが明らかとなった。この蓄積物を免疫沈降し、沈降物をnano-LCを用いて分画し、質量分析機により内容物を同定したところ、これらは特定のlidサブユニットが蓄積したものであった。これらの結果を併せると、lidサブユニットは秩序だった形成機構が存在することが明らかとなった。また、各サブユニットをノックダウンすることにより生じる中間体の内容物を決することにより、lidサブユニットの立体的な位地を決定することができた。
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