本研究課題では、アルツハイマー病(AD)の病因タンパク質アミロイドβペプチド(Aβ)を産生するプロテアーゼであるγセクレターゼの基質選択性の分子メカニズムを明らかにすることで、副作用のないAD治療薬の開発を目指すものである。我々はすでにゲノムワイドRNAiスクリーニングにより、γセクレターゼに基質選択性を付与する分子としてγセクレターゼ基質であるNotch受容体のER-Golgi間の選別輸送に関与するSurf4を同定しており、このSurf4による選別がどのような分子機構により行われているかを解明するのが課題である。平成22年度においては、まず培養細胞を用いた免疫共沈降実験などにより、Surf4が直接的にNotch受容体を認識していること、この認識にはNotchの細胞質側領域が重要であることを明らかにした。また、このようなSurf4による基質選別輸送機構をライブセルイメージング法などの細胞生物学的手法によっても検討するため、NotchやAPPなどγセクレターゼの代表的基質の細胞質側にGFPを融合した変異体を作製し、これらを恒常的に発現する細胞株を樹立しつつある。加えて、Surf4と機能的に相互作用する因子、あるいはAPP切断を特異的に制御する分子を同定するため、Notch切断産物、APP切断産物をそれぞれ特異的に検出する哺乳類レポーター細胞系を用いて細胞内小胞輸送関連因子にフォーカスしたtargeted siRNA libraryによるスクリーニングを開始している。次年度以降に、このスクリーニングから同定した因子を解析することにより、γセクレターゼの基質選別輸送機構の詳細がさらに明らかになると期待される。
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