本研究課題では、アルツハイマー病(AD)の病因物質であるアミロイドβペプチド(Aβ)の産生を担うプロテアーゼであるγセクレターゼの基質選択メカニズムを分子レベルで解明する事により、副作用の無いAD治療薬の開発を目指すものである。我々はこれまでに、γセクレターゼの基質選択を制御する因子としてショウジョウバエゲノムワイドRNAiスクリーニングにより、Surf4を同定している。Surf4はγセクレターゼ基質の一つであるNotch受容体のER-Golgi間輸送を選択的に制御していることがわかっており、この選別がどのような分子機構に因るものかを明らかにするのが課題である。平成23年度においては、線虫を用いた検討により(1)線虫生体内においてもSft-4(線虫Surf-4ホモログ)がNotchシグナルを制御しており、sft-4 RNAiによりNotchシグナル依存的プロセスである事が知られる陰門形成に異常が生じる事(2)生理的条件下において陰門前駆細胞(VPC)のアピカル膜上に局在するNotchが、sft-4 RNAiによりバソラテラル膜にも局在を示すようになり極性輸送が障害される事(3)Sft-4 RNAiの表現型が線虫のNotchオルソログであるLin-12 RNAiのそれと若干異なることから、Sft-4はNotch以外にもその輸送を制御する分子がある可能性があること、などが明らかになった。さらに、ショウジョウバエや哺乳類の培養細胞を用いた検討から、Surf-4とNotchの相互作用はpH依存性であり、輸送小胞/小器官内部が低pHになると解離する可能性がある事も明らかになった。これまでの研究成果とあわせて、現在投稿論文の準備が最終段階に入っている。
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